初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「あ、先輩コート預かりますね、掛けておかないと皺に…――」
伸ばした手をそのまま引き寄せられて、先輩の胸に閉じ込められる。
ふわりと香る先輩のいつもの匂いが私を包み込む。
「……会いたかったです」
その言葉に答えるように腕の力が強くなる。
私も先輩の背中にそっと手をまわした。
あぁそうか、
最初からこうすればよかったんだ。
言葉も大事だけど。
こうしているだけで、想いが伝わるんだから。
「ごめん……軽く嫉妬」
嫉妬?何に?
「隣に住んでるの男だって知ってて、こんな時間に来たって言うからさ。付き合いあんのかと思って……」
最後は少し気まずそうに言う先輩。
お隣さんは今日初めて会ったのに、
「今日初めてです。会ったの。それに会いたいのは先輩しか居ませんから」
今日会いたかったのは先輩。それを何度も口に出して言う。
こんなことで先輩に伝わるかは分からないけど。口に出さなきゃわからないなら何度だって言う。
「ごめん、ほんとに。馬鹿だろ?ただの隣の奴なのにな」
「ほんとですよ、」
「でも、ごめん」
「もうっ、また謝るんですか?謝ったらまた塞ぎますよ?」
何度も謝る先輩の口をふさいだのはこの前の事。
だからそれだけですぐにわかると思う。
冗談まじりに言ったその言葉に返事はなくて、そのかわりに……