初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「鈴山雪美ですよ。だからユキ」
ちょっと不器用な一面を持つ先輩に好感を持ちながらユキの名前を教える。
でもユキの名前を言っておいて今は違う名字なんだって思いだす。
「あぁそうか。そんな名前だったっけ」
だけど、なんて言う人と結婚したんだっけ?私も先輩同様彼女の新しい名字を思い出そうとしても全く出てくる気配がない。きっと目にするのは一年に一度の年賀状だけだからなんだろう。
だから仕方なく名字が違うってことだけ伝える。
「まぁ今はもう鈴山じゃないですけどね?」
「そうなんだ。」
「はい」
もう、この話しはこの辺で終わりにして欲しい。そんな区切りのつもりでハイと答えた。
だけど、先輩はそこで終わらせてくれなかったようだ。
先輩はビールのコップを右手に持ち、まっすぐとこちらを見てるのに遠慮がちに口を開く。
「……クルミは?」
「はい?」
聞きづらい事を聞こうとしてる?一瞬そう思ったけれど、返事だけを返す。
「もしかして、もう胡桃澤じゃない?」