初恋のカケラ【3/13おまけ更新】

二階にある自分の部屋に入ると、あいかわらず綺麗にされている室内。
家を出たあの頃のまま。高校生らしいインテリアのこの部屋は今は入ると少し気恥ずかしい。
机の棚の上に置いてある黒い楽器ケースはずっと家に置かれたままのクラリネット。いつもなら数年に一度あけて手入れするだけだけれどケースを開けて組み立ててみる。もう何年も吹いてないから（＊リード）さえない。

部屋に置いてあるクラシックのCDを取り出す。中学の頃に買ってもらったもので、昔はよく聞いてた。
楽器の手入れをしながらそれを聞いていると、色々な過去が頭の中に浮かんでくる。

ふと、目線の先に中学のアルバムが目に入った。
楽器を横に置き、重いアルバムを手に取り、そのページを開いていく。

クラスごとの集合写真と個人の写真。そこには懐かしい顔が並ぶ。
ノリちゃんも、ユキも、木村もいる。当たり前だけどみんな若い。いや、若いって言うか子供。
この頃は自分はもうだいぶ大人になってるつもりでいたけど、27の私が見たらどう見ても子供だ。

新たなページをめくるとすぐに目線は一人の顔写真を捉える。

「はは、もう10年以上経ってるのに……」

変わらずに私は、坂下くんを見つけるのは得意らしい。




＊リード＝マウスピースに取り付けて使う葦製のもの