初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
要するに結婚してんのかって事、その言葉は何度も聞かれてる。だからスラスラといつものセリフが口から出てくる。

「私は残念ながら昔も今も、ずーっと胡桃澤のままですよ」

ニッコリ笑って先輩にそう伝える。
だってニッコリ笑わなきゃ。私の意思で胡桃澤なんだって伝えなきゃ。強がりだってわかってても、それをやめる事は出来ない。

「そっか……。俺も、昔も今も外山だけどな?」

「何言ってんですか、先輩っ。男の人で名字変わる人なんてあんまりいないですから」

「わかんないだろ?」

なんとなく外山先輩は私の強がりを見抜いたう上でそんな風に言ってくれたんだって思った。
不器用だけど、案外優しい人だったんだなって。今更ながらに思う。

「なんていうか、この年で先輩って呼ばれるとなんかあの頃にすっかり戻るな」

「え?」

あの頃に戻る。そう、私もそれを考えてた。だってあの頃に戻れたらって今日、何度も思った。
あの頃に戻って……

「あの頃は俺も純だったよなーってな。今日は先輩なんて呼ばれて、思い返すのはそんなのばっかりだよ」

あの頃は、あまりにも純粋だった。
心も気持ちも何もかも
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