初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「攻撃、力?」
ただ言葉を繰り返す私に、先輩は少し眉を下げた。
「あー、クルミ?とりあえず家いれて?」
先輩の言うように私たちはマンションの前でそんなやり取りをしてた。寒いんだから家に入ってから言えばよかったんだ。
私はさっきので顔がまだ熱いけど、先輩は寒かったんだろうな。
「はい、すみません」
玄関のカギを開けてドアを持って「どうぞ」と先輩を招き入れる。先輩は私のその体ごと家に押し込んで後ろから抱き締めた。
「寒かった」
ギューって抱きしめられてるから先輩の息が耳にかかる。その吐息で耳は熱を持ちはじめる。
「そんなに、寒かったんですか?」
「うん、でもこうしてればすぐに暖かくなるから」
暖かくなるのか
温かくなるのか
音で聞くだけではわからないけど、両方の意味を持つのかもしれない。
なんだろうな、こういうとこ先輩ってかわいい。傍にいてあげたいと思う。母性本能くすぐるっていうのかな。
でも当然、部屋は寒いから暖かくなんかならなくて……。
「先輩、お茶とか淹れましょうか?」
「ん、もうちょっと」
まるで子供みたい。
「じゃあせめて暖房だけでもつけさせてください」
肩に乗せていた先輩の顔の方を向いてそう言うと、顔を上げた先輩の冷たい頬と触れた。