初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
週が明けての五日間は短いようで長いようで不思議な時間だった。
そして今日が坂下くんと待ち合わせた土曜日。
先輩に埋めてもらった心にはもう入り込む隙間はない。
優しいだけじゃない、激しい一面もはじめて見せた先輩に身も心も委ねた。
だから大丈夫。
坂下くんから何を聞かされても、平気。なはず。
ふぅー。
ポケットのスマホを取り出しては時間を確認する。
そしてまたそれをしまうと目の前を通り過ぎる人たちに目をむけた。
原宿という場所柄か、週末には恋人たちが多く待ち合わせてる。
ぴったりと寄り添うように歩いている大人の恋人たちや、まだ初々しい学生たち。もちろん同性同士、熟年の方もいるけど……。
どれをみても恋人たちに見えてしまうのは私の目がおかしいのか。
チラリと見あげた駅の時計はまだ10分前。
どれだけ私は落ち着かなかったのかと自分で苦笑いを浮かべる。
その目線の先。
私の視線を捉えると柔らかく微笑んで急ぎ足になった。
「もしかして、遅刻した?」
その問いかけに無言で首を振り、「全然、平気」
すでに日本語がおかしい。
あいかわらず坂下くんの前だと頭の回転が鈍くなるのか、まるで子供のような受け答え。
「そう、よかった」
坂下くんはそう言ってもう一度微笑んだ。