初恋のカケラ【3/13おまけ更新】

「っと、大丈夫?」

大きな手が私の肩をしっかりと捕まえてる。コート越しだから熱なんて伝わってくるはずもない。坂下くんが触れているのは肩だけなのに何故かそこだけ熱い。

上から聞こえた声に導かれるように顔を上げるとあまりの近さにギョッとしてすぐに目を伏せる。

「だ、大丈夫っ」

全然大丈夫じゃない受け答えで。たったこれだけの事で焦る自分が情けない。

あぁもう、なんでこうなんだろう。
大体、私がちゃんと周りを見てないからこんな事になるのに。

坂下くんと出かける事で過去を思い出したりなんかするから……

「ありがと」

そう言ってから距離を取るように半歩後ろにさがる。

30センチ以上離れるとやっと鼓動がおとなしくなっていく。それと同時に坂下くんの手からも逃れて、ホッとしているはずなのに少しだけ肩が寒い。

「二個目だね」

坂下くんは大鳥居を見上げると微笑んでから「さ、行こうか」と言ってまた歩き出した。私もそれを一度見上げて、

「え?一個目ってどこだった?」

「あぁ駅出てすぐぐらいだったかな、話してたから気付かなかったのかな」

そうなんだ。やっぱり周り、全然見えてない。
男友達とただ神社に参拝に来ただけ。そう言い聞かせて舞い上がってる自分を戒める。
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