初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
再会の夜2
「そう、ですね。あの頃はバカみたいに純粋でした」
『あの頃』を思い出しながら一口でビールを飲み干す。
「なんだよ、クルミ結構飲めるんだな」
それを見てちょっと驚いたように目を見開いてから、先輩は空になった私のグラスにビール注いでくれる。
「結構じゃないですよ、すごく飲みます」
注がれたら口をつけるのが礼儀。いつからだろうそんな風にするのが普通になったのは。
「ハハ、普通女の子は、あんまり飲めないとか言うんじゃないのか?」
「だって私、もう女の子って年でもないですから」
そんな言葉にもなんなく返せるぐらいに十分大人になってるつもりだ。
可愛いと呼ばれる年齢は過ぎてる、だったらそれに対応していくしかない。
「俺ん中ではクルミは女の子のまま、なんだけどな」
色んな意味に解釈できるその言葉に一瞬うろたえて言葉がつまる。
下を向いたまま呟くように言った先輩。
「私の中でも先輩は先輩のままですけどね?」
この言葉が正しいのかわからない。
でも今の私はこんな言葉しか浮かんでこない。
いつだって私は先輩にいい言葉を言えてない気がする。