初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「あの頃も今も変わらずに寒がりなんです……」
何故、敬語。
「あぁごめん笑ったりして。」
そう言ってるけど、坂下くんはまだ想い出してるのか口元が笑ってる。
「さすがに今はあそこまで出来ないから、ストールで我慢してるけど」
言い訳を並べてみるけど、考えてもやってる事は当時と同じ。相変わらず色んな意味で成長していない。
「あれはあれで、可愛かったよ、本当に」
本当にってつける辺り、ちょっと嘘っぽい。だけどそんな事でムキになってもかえって子供っぽいから、
「褒め言葉として取っておきます」
……あの頃。こんなやり取りが出来たら中学時代はもっと楽しいものになったんだろうなぁ。
「あの頃、もっと話しかければよかったな、胡桃沢さんに」
ドクンッ―――。
そんな言葉言わないで。
そんな風に言われたら、、
「ダメダメ、坂下くんが木村みたいだったらイメージダウンだよ」
優等生で硬派。女の子に興味なくて……
当時の私の勝手なイメージだけど、それが崩れた所でやっぱり坂下くんの事は好きになっていたかもしれない。
物腰は柔らかいのに、一線を引いているみたいに寄せ付けない雰囲気がどうにも惹かれる要素だった。
「聡みたいにはできないけど、中身は一緒だよ」
そう寂しそうに言う坂下くん。
そこに一際強い風が吹いてきて、さらに寒さが身にしみる。