初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
グラスを持ってゆっくりと味わうようにワインに口に運ぶ。その姿につい見とれてしまいそうになる。
私の視線に気づいた坂下くんが顔を上げて「なに?」と聞いてきた。

「あ、……いや、ワインを持つ姿が似合うなって」

思ったままの事を口にすると、「そうかな」と照れたように下を向く。
そんな姿も意外で。新たな一面を見た私はお酒が入ってる事もあって勢いで口にする。

「大人の男って感じで素敵だよね」

まるでユキみたいなセリフ。酔っているとは恐ろしい事だ。
耳が赤くなっている坂下くん。照れている目の前の彼を見て自分の言った言葉に羞恥が襲う。

「胡桃澤さんも、そういうこと言うんだね」

そう言う事って。いや、だからそれは口が滑っただけで。思ってるけどそんなことなかなか言えるもんじゃない。普段はユキの事、羨ましいって思ってるぐらいなんだから。

「……なんていうか、」

言葉を選んでると、坂下くんが口を開く。

「まぁ、でも感心しないな。」

「え、」

「もしも自分の彼女が他の男にそんな事言ってたら、」

その言葉にハッとなって。

「そ、そうだよね。ごめん。迷惑だったよね」

「迷惑、とかそういうのじゃないよ。」

寂しそうにそう言った後。「勘違いしそうになるから」視線を逸らしたまま続けた。
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