初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「ごめん、先に一つだけ報告しておきたい」
先に?というか後にもなんかあるんだろうか。
坂下くんが後悔しているのは奥さんとの事のはず。
中学時代に後悔してるのは子供だったという話し、それ以外に何が?
だけど報告と言った坂下くんに言葉に今は頷くしかない。
「え?あ、うん……」
坂下くんはコトリとグラスを置くと、右腕をカウンターについて私の方に少し体を向けてきた。
視線を感じて右側だけが熱いような気がするけど、平静を装ってグラスを置く。
フゥーっと大きく息を吐いてから、
「置いて行った用紙にサインしたんだ」
それを示すのは離婚届のこと。
結局、関係を修正できずにそのまま別れを決意したという事なのか。
「……そう、」
他に何を言えばいいというのか。
「この話しは終わり。」
「え?」
急に明るい声で言う坂下くんに面食らって顔を見る。その顔はもう暗いものではなく、あきらかに前を向いた表情だった。
どこでそんな風に吹っ切ったのか、不思議でならない。
たしかに新年会に会った時は普通だった。それに今日も。だけどそれは無理にそうしてるものとばかり思ってたのに。