初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「クルミ、今度飲み行くか」
「いいですねー」
お互いにスマホを取り出してすぐに連絡先を交換する。
どっちが誘ったとかそういうんじゃなくて、ただ一緒に飲みたいから。
お互いに独身で何にも縛られない。
男と女というよりも先輩と後輩、そんな関係が嬉しくて少し気分が浮上する。
私はカバンの中にスマホをしまうと残っていたビールを口にした。
その時後ろから、懐かしい声が聞こえた。
「外山先輩、久しぶりですね」
懐かしいというか、この声は。
私が声をかけられてるわけじゃないから、振り返るのはおかしい?
でも聞き覚えのあるこの声。さっき近付こうとして諦めたその彼の声。
慌ててユキの姿を探す。
さっき彼の所に行くと言っていたけど、今話しているメンバーの中に彼の姿はない。
目の前の先輩は声をかけられたその人を見て微笑んで、
「よぉ、坂下、久しぶり。おまえもここ座れば?」
あぁ、やっぱり。
その時、初めて私は振り返り「どうぞ」と言って隣の席の椅子を軽く引く。
隣なら顔を見なくて済む。単純にそう思ったから。
だけど、すぐにそれは失敗だったと気付く事になる。