初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「先輩とはよく飲みに行くの?」
坂下くんは自分の話は終わりと言ったように、今度は私の事を聞いてきた。
「外で飲みに行く事はあまりないかな。」
「そう、」
正直に答えたけど、それについては彼はご不満のようで、表情を曇らせる。
「あ、先輩が忙しくて会社帰りに待ち合わせが出来ないから。お休みの日に家で飲んだりはするよ」
そう慌てて付け加えると、坂下くんはやっと柔らかい表情になった。
「お互い仕事があるし、なかなか思うようにならないかもしれないけど……って、俺が言うような事じゃないか」
ははっ、と乾いた笑いをして言葉を止めた。
「うん、なるべく。時間作って会うようにしてる」
私がそう答える事で坂下くんが安心してくれるのなら。
離婚するという決意をしたのに、変わらない態度だと思った。けどそれは違っていて、私と先輩の恋愛に何かを重ねているようなそんな気がして、やっぱり坂下くんの心の傷の深さに胸が痛くなる。
だからと言って私が何かを出来るわけじゃない。だけど、
「だったらお参りの後、待ち合わせすればよかったかな」
そんな事、考えもしなかった。今日先輩と会うなんて選択肢私の中にはなかった