初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「ん?メールが来てすぐ、かな?」
すぐに返された答えに、ハッと息をのむ。
確かにメールしてから急いできた。けれどあれから30分は経っているのに。
「ごめんなさいっ、私。」
何時につくとか、今どこだからとか。何も情報を与えずに行くことだけを宣言するようなメール。
「ん、クルミの手。温かいな」
微笑んで頬に当てた手を手袋越しに掴んだ。
「でも冷えちゃうから、ここ」
そう言って自分のコートのポケットに私の手も一緒にしまう。そして、
「さ、帰ろうか」
いつもの優しいその声に、手から伝わってくるその熱に、ざわついていた心が少しずつ凪いでいく。
「はい」
ねぇ、先輩。
ずっと私を先輩の隣に置いてくれる?
変わらずにずっと私を……捕まえていてくれますか?
ポケットの中で先輩の手をぎゅっと握りしめて、もっと寄り添って歩く。
ゆっくりと歩く先輩の家までの道。この歩くスピードもきっと先輩は私に合わせてくれている。
坂下くんとは違う。やっぱりここが私の場所だと感じる。
「クルミ、なんか飲む?」
「あ、お水買おうかな……」
「それならあるからいいよ、お酒は?」
もう、お酒は。
「……いえ、」
今欲しいのは、
心を埋めてくれるモノ―――。