初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「クルミもなんか飲まない?」
「えと、」
「今日ご用意できるのは、ビールと日本酒とワインです」
そう笑いながら言うけれど、先輩の家にワインがあったのは初めて。
今日飲んだのはワインだから、色んなお酒を混ぜるよりはいいのはわかるけど。
でも……
「あぁ、ジンジャエールもあるから、この前のもつくれるよ」
ん?どうする?って小首を傾げて聞く先輩。
そう言うしぐさ、男にしておくのはもったいないなんて、今考える私はどうかしてる。
「あの、」
「俺さ、酒なら何でもいいから。クルミが選んで?」
こういうときでさえ、私の意見が優先で。
先輩は。いつもいつも。いつも、いつも……
「先輩と一緒がいい」
先輩が思うとおりに、
先輩と一緒に、
フッ
「クルミ?」
また一気に艶めいた声色で私を呼ぶ。
お酒なんていらない。ただ先輩の温もりがあれば。
結局私が一番、
先輩の温もりも。
先輩の優しさも。
先輩の想いさえも、すべてこの手に感じてないと不安で。
「……お酒は、いらない」
だから今すぐ、私の隙間がなくなるぐらい。
先輩でいっぱいにして。