初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
聞こえてくるのはお互いの吐息だけ。冷たかった先輩の身体は、すでに熱を帯びている。
こんな時でさえ、先輩は優しくて、もっと自分本位にしてくれてもいいのになんて思う。

「クルミ?」

いつもよりもワントーン低い声が鼓膜を震わせる。

「?」

目線だけでその声に答えると、

「今日のクルミ、ヤバイ」

ヤバイ?先輩の表現って時々わからない事がある。

「……先輩って国語苦手でしたっけ?」

そんな事を冷静に聞く私もどうかしてるけど。
女子力足らないのはもう周知の事実だから、正直に聞いてみた。
ベッドの上で向き合うようにしてこのやり取りをしている私たち。

「クルミさ、この場面でそれ聞いちゃう?」

先輩をたくさん感じたくて、
その熱も心も全部受け止めたくて、そう考えたらいつの間にか夢中になってた。

その私を先輩がヤバイと言うなら、

「……ごめんなさい。だって…っ―――」

そうさせているのは先輩だと伝えたかったのに、その言葉は先輩の口付けに呑みこまれて、

「悪くないよ、イイって言ってんの」

意味は違ってるけど、先輩がイイと言うならば。
それに呑まれたまま、溶けるまで委ねてみるのもいい。
< 280 / 820 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop