初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
ノリちゃんたちと駅前で別れ、私たちも改札に向かう。
その歩みはいつもよりゆっくりで。

「あの、帰る所ごめんね、木村が捕まえちゃって」

―――それで、メールってなんだったの?
それは言葉になって坂下くんに届く事はなく。

「いや、まだ帰るつもりじゃなかったから」

それってどういうことなのか。
木村が言うには坂下くん、駅に向かってたって言ってたけど。

「……そう」

―――それで私にメールしてきてたの?
頭には言葉はたくさん浮かぶのに、どうしても口にできない。

「あの、さ」
「あの」

二人で同時に話してしまって「えと?なに?」と、さらにお互い譲り合う。
結局は坂下くんの方が先に「ごめん、さっきメールした」と。

良かった。私が聞こうとしていた事を坂下くんが言ってくれて。

「あ、うん、そうみたいだったけど。気付いたのさっきで。私、まだ見てない」

受信を確認したのが坂下くんのいる前だなんて、本当になんて間抜けなんだろう。

「いや、大したことは書いてないよ、あぁでも……」

言いづらいからメールをしたのだったら、

「あの?今見たほうがいい?」

「いや、今から少し時間もらえないかと思ってメールしたんだ」

今からって、もう十分遅い時間で。
もし私が、家にいたらどうするつもりだったんだろうか。
このタイミングで、私に何を話すつもりなのか
< 296 / 820 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop