初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「……あの言葉の意味。全然わからなくて」
本当は、事あるごとに記憶の中から引っ張り出してはそれを考えてた。
「最初は、前途有望って書いたんだ」
わざとそのあとに言葉をつけた?
驚いて坂下くんを見ると、フッて小さく笑う。
「あの言葉のあと、さらにクエッションマークがつくはずだったんだけど、途中で誰かに取り上げられたんだ」
そして、もうそれが誰だったかは覚えてないけど、と続けた。
もしもあの言葉にクエッションマークがついていたら、きっと私は―――
「そんな事とか思い出して、懐かしくてあの頃に戻った気になってたんだ。でもあの頃には戻れないし、もしもなんて事は存在しない」
坂下くんの言うとおりだ。
わかってたはず。わかってたけど、坂下くんの口から聞かされるとさすがに。
「半年近く久しぶりに一人になって考えるべき事を封印して、楽しい事だけ求めて。結局その間にもくるみの中で小さな命は育っていて。知らなかったとはいえ、家を出た意味を深く考えずに俺は……」
坂下くんはテーブルの上の手をぐっと握りしめて、何かを決意したかのようにもう一度口をくっと真一文字に結んだ。
「これから迎えに行ってくるよ」
坂下くんはハッキリとした声で、私をまっすぐと見つめて言った