初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
初恋は実らないと言うけれど……

「二月は仕事落ち着くから」

先輩はそう言って、温泉旅行の日程をいくつか挙げるとノートPCを開き、その場でいくつか宿をピックアップしてみせた。

「あの……そんなに急がなくても……」

そうじゃなくて。
旅行に行く事よりももっと話す事がある。
もうこれ以上、先輩には甘えられないと決めたばかり。

「クルミ、俺の誕生日知ってる?」

「え?」

突然問われたのはそんな言葉で。
そういえば、聞いたことなかったかも。
この年になると誕生日って本人に聞かない限り知るチャンスってなかなかない。
付き合いだしてから半年になるけどそう言えばそんな話はした事なかった。

「俺ね、二月生まれ」

「え?いつですか?」
「だからさ、誕生日プレゼントと思って一緒に行ってくれる?」

小首を傾げられて、可愛く甘えられてしまえば。うんと頷くしかなくて。
先輩が甘えるのはそうない事で、さっきの決心はどこへやら……。

「……わかりました」

「あ、プレゼントなんて用意したらダメだから」

「どうして、ですか?」

「モノじゃない、欲しいものがあるから」

「?」

ハテナ顔の私を見て、先輩はフッって笑ってから、

「ん、いいよ、クルミは身一つで来てくれればいいから」

と言われても……
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