初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
目を瞑っていても、眠れるわけではない。ただ二人の会話を遮断したかっただけ。
だけど、右側から視線を感じるような気がするのは、私が気にし過ぎなのか。

しばらくすると静かに聞こえてきたのはピアノ曲。
言葉がないその音だけというのが心地よくて、微妙な揺れと共にいつしか眠りの世界に入っていった。

「……ミ、クルミ?」

優しく呼びかけるその声に意識が戻った頃にはしっかりサービスエリアについていて。

「わ、ごめんなさい。目を瞑るだけなんて言ったのに。思いっきり寝てました」

本当に寝るつもりなんてなかったのに、我が事ながらどういう神経してるのか。
だけどあの揺れと、心地いい音楽。それに包み込まれるような感じがしたのは?

「楽しみにしてたって言っても、旅行の前は寝ないとダメだろ」

「……ですね」

前半部分は違っているにしても、旅行の前はきちんと睡眠取らないとダメに決まってる。

「飲み物買いに行くけど、クルミは?」

「あー私が行きますよ」

せめてそれぐらいは私も出来る。いや、むしろそれぐらいしかできない。

「いや、身体動かしたいから外出るよ。なら一緒に行く?」

「はい」

と言っても、いつも結局こうなるんだけど。
ほんと先輩は私だけに何かをやらせることをしない。
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