初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
お腹も一杯になって、二人とも大満足で部屋に戻った。
先輩がビールを飲むというので、ちょっとだけ私も付き合った。
琉球畳のこの部屋は座椅子さえもモダンで、だけど色調が押さえ目のトーンだからか落ち着いた癒しの空間になっている。

「温泉というよりもリゾートホテルみたいな感じですね」

「知り合いに教えてもらったんだよ、ここ」

「そうなんですねー」

だから予約もスムーズに取れたんだと改めて思う。

「ほら、この前会っただろ?ちょっと軽そうなやつ」

まぁ確かにそう見えなくもないけれど。それにしてもその言い方は。

「軽そうって……、あのお隣さんですね?」

「アイツは東京出身なのに、大学がこの辺だったからか結構詳しいんだよな」

アイツとか言ってるけど、名前は教えてくれる気はないらしい。

あれ?東京出身なのに、わざわざそこに住んでるの?

「東京なのに、一人暮らししてるんですか?」

「あぁ、アイツは研究の方だから帰れない事も多いから、会社の近くの方が何かと都合いいらしい」

「……大変なんですね」

「だな、俺は営業だからまだ時間は自分で組み立てられるし、いい方だよ」

そう言った後、先輩はコトンとグラスを置くと立ちあがって私の隣にくると、

「クルミ、ソファの方いかない?」

「え」

「ここじゃ、クルミのこと抱っこできない」

「抱っ……って、」
< 320 / 820 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop