初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
そのまま手を引かれて立ち上がるように促す先輩に、

「あの、えと。先輩?」

「んー?」

あーもうこの返事の時は自分の意思を通すって合図で、本人は知らずに使ってるようだけど。
腕を掴まれたまま先輩を見上げて話を続ける。

「あの、だからちょっと先輩に話があるっていうか」

「ん?明日じゃダメ?」

なにこの先輩の戦略。こうすれば私が黙るとでも思って……
小首を傾げて可愛らしく聞く先輩に、やっぱりまた黙るしかなくて。

「……明日でもいいです、けど」

「じゃ、ソファいこ。あーそれとも露天風呂入っとく?」

「え、それは……」

すっかり先輩のペースに呑みこまれて。決心はどんどん鈍るばかり。
流されやすい自分と、私をうまくその気にさせる先輩と。
もうしばらくこのままでいたら。そしたらきちんと私の全部が先輩に向くんじゃないかなんて、思ったりもする。

「やっぱり、もう少しあとで。」

「……はい」

後でいいのか、なんて思ってる自分はやっぱりおかしい。
目を閉じて彼の顔がたまにチラつくのは気のせいって。
だって今ここで先輩といる私は、間違いなく愛されてると感じるし。その愛を心地よく受け止められるのに。
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