初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
結局、ソファで抱っこは現実のものに。

先輩は甚平だから着崩れとか関係ないのかもしれないけど、私は浴衣で羽織を上から着ているとはいえ、やっぱり気になって。

「クルミの浴衣姿見たの、二回目だ」

耳元でしゃべるその声に時折反応しちゃうのは酔っているせい。

「……二回目?」

ぼんやりする頭の中で、その言葉を繰り返す。
きっと中学の時なんだろうけど、待ち合わせたわけでもないし。いつ見たんだろう?
先輩はお腹の上で拘束している手をキュッと握ると、

「俺が高一の時、同級生と一緒に夏祭りに来てるのを見かけた」

「え?声かけてくれたらよかったのに」

振り向こうとして身体を捩るけど先輩の拘束は緩まない。私はあきらめて力を抜き、また先輩の胸に寄りかかる。

「俺さ、彼女といたし、」

彼女……。
たしか高校に入ってすぐに告白してきた子と付き合ったとか言ってた気がする。

「それなら、声かけられないですね」

彼女に変な詮索されても困るし、それに私が先輩の知らない誰かと居たのなら声も掛けづらいのは当然。

「や、クルミが同級生らしき男といたから余計にな。私の彼氏ですなんて紹介されても困るし」

「は?!ないない。だって私、全然もてないですし。初めて付き合ったのだってもっとずっとあとで…―」
「普通、男といたら狼狽えるだろ?それが初恋の子なら」

最後は小さな声になってたけど、初恋の子って確かに言った。
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