初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「クルミ、おいし?」
先輩が耳元で、そんな風に聞くから身体を捩るようにするけど。ガッチリとホールドされた腕にそれを阻まれる。
ソファと同じように後ろから抱っこされてる。しかも部屋付きの露天風呂で!
な、流された………。
先輩に上手く言いくるめられて、結局先に湯船に浸かった。だけどすぐに入ってくるから慌てて背を向けた。
タオルは湯船に入れちゃダメって書いてあるし、そうするしかなかった。
だって向かい合うとかムリだし、となると背を向けるしかなくて。
それを見た先輩にまんまと捕獲されて、今に至る。
露天風呂の横に折りたたみの小さなテーブルが置かれていて、そこに日本酒の小瓶が用意されてた。
先輩はそこからグラスを取ると、私にそれを持たせた。
後ろに目がないから先輩がどんな顔してるかわからない。
だけど、その声が色気を含んでいて……気付けばそれに口をつけていた。
お風呂のなかで飲むお酒は、身体の中に入ると冷たさがどんどんと下に降りて。お腹に到着する頃には、内側からふわっと暖かくなってきた。
不思議な感覚。
「おいし、」
そのおいしさを先輩に伝えたくて強引に振り向くと、そこに愛しそうに目を細くして見つめる先輩と視線が絡んだ。