初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
先輩は露天風呂にとどまらず、さらに熱くなったその熱をそのまま私に与え続ける。

逆上る寸前だった私の体は、考える事さえも拒絶する。
その熱に流されてしまえば、あとはそれを受け入れるだけ。
それがわかっているからこそ、思考をストップさせているのかもしれない。

「センパ……」

「クルミ。名前、呼んで?」

熱い瞳に見つめられれば、いつもなら呼ばない先輩の名前がスルリと口からこぼれ落ちる。

「タケ…シさ、」

「さんはいらないよ、クルミもう一回。」

髪を撫でるその手が気持ちよくて、うっとりとしながらまた口を開く。

「タケシ……」

先輩は満足そうに微笑むと、たった今名前を呼んだその唇を褒めるようにそっと撫でる。

「一度、呼んで欲しかったんだ」

そうだ。名前で呼んで欲しいって前から言ってた。でも一度って?

「プレゼント確かにもらったから」

あとはもう……先輩からの溢れる想いに溺れて、意識さえも保つのもやっとで。
ただそれを受け止めるのに精いっぱいで。

「……今はまだ、俺の。だから」

そんな風に呟いたのは私の耳に届いていなかった。
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