初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
家に帰りつくと、キッチンの隅にチョコレートの紙袋を置いた。
部屋に置いて、暖房で形が変わってしまってもいけない。
なにより気がかりなのは当日の天気。ここの所ぐっと寒くなってめったに降らない雪までチラチラする日もある。
雪に慣れてない都会では、ちょっとの事でも大騒ぎで。

「天気、崩れないといいな……」

その日はご飯を一緒に食べてそれから先輩の家にお泊りの予定だけど。

カバンの中の携帯がバイブ音をわずかにさせて着信をしらせてる。

「もしもし」

『あ、クルミ?』

このタイミングで先輩から電話が来るなんて以心伝心?なんて思ったりして。

「今、金曜日のお天気大丈夫かな?って考えてたから。フフ」

『その事で電話したんだけど、』

能天気に答えた私に対して、先輩は声のトーンが低くて。次に続く言葉はあまりいい事ではないのかもしれない。

「あ、お仕事なら私…―」
『いや、そうじゃなくて天気。かなりひどいみたいだからさ。』

天気予報では大雪が降るかもしれないなんて言ってたけど。そうは言ってもそんな事あまりないし、降ったとしても霙ぐらいのものだろうと思っていた私は、

「あーなんか雪とか言ってますよね?ホワイトバレンタイン?」

乙女な先輩ならホワイトバレンタインなんて響き好きかもと冗談まじりに言う。

『クルミ、その日はまっすぐ家に帰って』

え?それって会わないって事?
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