初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
ヴァレンタイン当日。
東京地方は夜半から降り続いた雪がうっすらと路面を白くさせていた。
ニュースを見るけど特に混乱もなく電車も動いている様子で、これなら普通に会社にも行けそうだ。
いつもよりも低めのヒールを出してそれを履くとストールをぐるぐると巻いて家を出た。

お昼を過ぎたころには段々と強くなる風と共にその雪の勢いも増してきていた。

営業に出たはずの同僚と廊下ですれ違ったから声をかけると、相手先へ行く電車が止まってしまうかもしれないから来ない方がいいと言われたとの事。しかも山の方はすでにかなり積もっているらしい。

窓辺でまだまだ降り続く雪を見て不安を募らせる。
過去にも何度か肝心な時に先輩に会えない時があった。先輩と私はなんともタイミングが合わないっていうか……

恋人同士においてのタイミングってけっこう重要なんじゃないだろうか。
同じ時に同じ事を考えたり、行動したりすることも以心伝心っていうか……。まぁそうありたいって私の願望なのかも。

私は欲張りだ。これ以上何を先輩に望むというのか。
むしろ自分の事を棚に上げて色々と望み過ぎだという事に蓋をして、

「雪、止まないかなぁ……」

そんな私の願いさえも、神様は全く聞いてくれるそぶりもなく。夕方に向かうにつれてその雪は吹雪くように降り続けた。
< 331 / 820 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop