初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
バッグの中からスマホを取り出してみればチカチカと着信のライトがついていた。
転ばないように歩く事に精いっぱいでその振動さえ気付かなかったのだろう。
思った通りそれは先輩から。すぐに折り返してみれば、

『クルミ?今どこ?』

少し焦った様子の先輩の声が聞こえてきて

「今ちょうど家に着いた所でした。すごい雪ですね」

『ハァーよかったぁ』

私が電話に出なかったから、とても心配してくれたようで、すごい雪だなんて言った私を先輩は随分と能天気だと感じただろう。

「いつもの倍かかりましたけど、電車も一応動いてたので大丈夫でした」

『それならよかったけど』

ほっとした様子の優しい声で言うけど、そういう先輩は?今どこなんだろう。

「あの、先輩は?」

『着替えようと思って、家に帰って来た所』

着替える。明日は休みだし、その方がいいのはわかってるけど。
まさか雪対策して……?

「先輩、これから来る気ですか?」

『うん、クルミと約束したしね』

「ダメです」

うちの周りも結構積もってたし、

『電車は動いてるみたいだし、大丈夫だよ。それに』

「それに?」

『当日にチョコもらわないと意味ないだろ?せっかくのバレンタインなのに』

いやいや、そんなところで乙女力発揮しないで。チョコよりも雪の心配して欲しい。
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