初恋のカケラ【3/13おまけ更新】

「初恋ごっこ飽きたんじゃないのかな、先輩が」

「そんな事、あるわけないじゃないっ」

強い調子で否定するノリちゃんに、

「ここ数日で出した結論がそれ」

私は冷めたように言う。だってそう思う事が一番自分にとって傷が少ないから。やっぱり私は自分の身を守る事が一番で、それに代わる一番が現れた事は未だかつて一度もない。

「……それはなんか違う気がするけど」

ノリちゃんもハッキリと否定する事はない。自分たちに当てはめると否定したい気持ちもあるんだろうと思う。だけど、

「ま、そのうち結論出るし。いいよ、飲も」

今日は飲む気満々で焼き鳥やに来ていた。目の前の瓶ビールを掴んでノリちゃんに注ぐと、嬉しそうにグラスに注がれたビールを一息で飲み干した。
そして、ニコッて笑うと

「飲むのはいつだってオッケーよ。」

そう言ってから又グラスを差し出した。
ノリちゃんはすぐに察知して今の話題から話を切り替えた。
そう、今日は話を聞いて欲しいわけじゃなくて。ただ飲みたいだけ。飲んで、飲んで、不安も不満も忘れてしまいたい。それが正しい方法じゃないのはわかってるけど、連絡を取りたがらない先輩に直接聞くすべはないから。今はただ、その時を待つしかない。
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