初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
数週間が過ぎ、その間も先輩との連絡はメールのみ。
その状態にもだいぶ慣れてきて、こんな時期があってもまぁいいかとさえ思うようになっていた。
三月に入ってからはずっと暖かで、このまま桜が咲いちゃうんじゃないかなんて声が聞こえ始めていたある日の事。

【今日、会える?】

久しぶりなんだからせめて前日に言って欲しかった。そしたらもうちょっとましな服装で来たのに。

今日は水曜日。特に何も予定がない日は服装に気合も入らないというもの。そんないい訳ばっかりが浮かんでくるけど、きっと仕事がひと段落したんだろう。けれど、今日逃すと次はいつになるのかわからないから、とりあえずすぐに返事をした。

【はい、大丈夫です】


     *****

先輩の行きつけのバーで私は一人。会えるかと聞いてきたのは先輩なのに、少し遅れるからそこで待ってて欲しいとメールが入った。

このお店は何度か来ているけれど、バーで一人なんて慣れてない。一人で飲むほどお酒が飲めるわけじゃないし、それに……なんだか落ち着かない。

会社を出る時急いでいたからきちんと化粧直し出来なかった事を思い出し、席を立ち化粧室に向かう。
髪を直していると、ネックレスに髪の毛が引っかかってしまって、少し強引に引っ張ったら

「ぁ、」

金具の部分が外れてしまった。毎日のようにつけていた先輩からもらったネックレス。なのに、このタイミングで壊れるとか。……また頭の奥で警告音が聞こえた気がした。
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