初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
家までの道のりをいつもと同じように歩く。
あんな事があっても普通に電車に乗って、電車の中ではスマホをいじって、今までと同じような行動が出来る自分に。

【クルミって別れる時、縋って泣いたり塞ぎこんだりした事がない】

ノリちゃんに言われた言葉を思い出す。先輩にもさっき同じような事を言われた。
人はどんな時にそんな風にするんだろうか。それができる人を少し羨ましいとさえ思う。たかが恋愛だなんて思ってないし、真剣に向き合ってるつもりでいるのに。

特に今回はそのつもりで挑んでいた、……挑むなんて思うこと自体おかしいか。

ハハ……

力なく笑うと家の前までついていた。



「正直、今回の仕事はそれだけに集中したいんだよね。だから、」

いつも笑っていた先輩が。
熱っぽい視線で見つめてくれた先輩が。

「―――別れよう」

あんな顔見たことなかった。
知らない人みたいだった。

決定的な言葉を言われて、泣く事も縋る事も出来ずに。
それなのに頷く事も出来ず。

「たぶん、次会うのはあの二人の結婚式だろうから、その時には普通にしてくれるかな」

「……はい」

「よかった。それじゃ、帰ろうか」

あれは、現実だったんだよね……
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