初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
待ち合わせたのはやっぱり渋谷で。
木村も私もそんなにお酒に強くないから飲みながら話すというのはやめにして、とりあえずご飯を食べながら話す事にした。だけど、お酒が入らないせいか木村の口はゆるくならずに。

「場所変える?」

待ち切れずにそう言ってしまうと、

「やっぱ俺、酒飲んでもイイ?」

「一杯だけね。私は木村の事介抱しないよ」

正直にそう言うと「わかってるって」と木村は苦笑いで頷いた。

「先輩が教えてくれたバーでイイ?」

当然そこでしょ、とばかりに言う木村に私は

「あー出来たら、別のとこがいい……」

と言葉を濁す。当然そんな事言ったら木村は怪訝な顔で私を見る。

「何クルミ、喧嘩でもした?」

喧嘩ぐらいならいい。というか考えてみたら喧嘩さえした事もない。喧嘩にさえならなかった私たち。それはたぶんお互いに本音で向き合ってなかったから。先輩に声を荒げて言ったのさえあの時が初めてだったんだから。

「クルミ?」

「あ、うん……まぁ、とりあえず別のお店ならいい」

木村に別れた事言うべき?
もしかしたら男の気持ちってヤツ、木村ならわかるのかもしれない。木村はそんな事を話せる唯一の男友達ってことなのかもしれない。
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