初恋のカケラ【3/13おまけ更新】

「これ、そちらの誰かのだと思うんですが」

携帯電話を大きな手のひらに乗せて、見せてきた。
見覚えのあるストラップがついていて、うちの部署の人のものだとすぐにわかった。

「わ、すみませんっ、拾ってくださったんですね。ありがとうございます」

私がそう言うと、声をかけてきた時と打って変わって笑顔を見せ、

「いえ、お渡し出来て良かったです」

営業スマイルなんだろうか、爽やかな笑顔でそう言って渡してくれた。

私はもう一度お礼を言ってからその場を後にした。
そしてスマホを取り出し、携帯を拾った事を同僚に伝言してもらうように言うと次はノリちゃんにもう少し遅くなる事をメールをした。

面倒だが週末に電話がないのも困るだろう。二次会の場所へ急いで向かった。

すでに盛り上がり始めていたからこっそりと同僚を呼んでその電話を渡すとそのまま店を出た。

あの場に座り込んだら最後、終電は必須だ。まだ九時だと思って油断しているとすぐに零時になってしまう。
そこにタイミングよくノリちゃんから電話がきて、途中の駅で待ち合わせて家まで一緒に帰る事にした。

大したことしてないのに、なんだか今週はずいぶんと疲れた。ノリちゃんと飲むなら万全の態勢で飲み始めないとすぐに寝てしまいそうな勢いだ。

「年、かな……」

ポツリと呟いた自分の言葉に苦笑いを浮かべて待ちあわせ場所まで急いだ。
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