初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
やっと身体が店内のクーラーで冷やされた頃、愛羅ちゃんの彼は現れた。
出入り口が見える場所に愛羅ちゃんは座っていたから、瞬間顔がパーっと明るくなって満面の笑みを浮かべたから来たんだってわかった。

聞くまでもないけど、念のため「ん。彼、来た感じ?」と言うと「はいっ!」と元気よく答えた愛羅ちゃん。
この前のバーベキューの時はまだ付き合ってなかったみたいだけど、今日はもう彼として来てるから二人の雰囲気は変わっただろうか。

「巧くん。」

彼は愛羅ちゃんに気付いて、その隣の私を見て小さく頭を下げた。そして席に近付いてきた彼に、

「こんばんは。今日は二人のデートお邪魔しますね」

愛羅ちゃんと並べてみると、意外にも素敵なカップルに見える。この前は私服だったからかなり若く見えたけど、スーツを着ると印象が違う。とはいえ、花見の時にいたかどうかと聞かれると全く覚えがない。

同僚の携帯を拾ってくれた彼でさえ、顔も覚えていないのだから。

あの頃はまだ心の余裕がなかった。きっと周りなんて何も見えてなかった。愛羅ちゃんがあの時、イケメン揃いって言ったことも聞き流してたんだから。覚えてるはずがない。

軽く挨拶をすると彼はすぐに「ちょっと早いけど、移動します?」と愛羅ちゃんと私にお伺いを立てる。
ここでコーヒー飲むなら早くいってお酒を飲んだ方がいい。そんな判断だろう。

「愛羅ちゃんが良ければ、私はいいよ」

「じゃあ、行きますか」
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