初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
コツコツと音がして、先ほどの女性のスタッフに案内されその人は現れた。

「すみません、遅くなって」

急いできたのか、うっすらと額に汗が浮かんでる。

「よ、おつかれ」

愛羅ちゃんの彼が空いている席に座るように促し、私の隣に座りながら「こんばんは」とにこやかにあいさつする彼。その笑顔は、彼の大きな体とは似つかわしくないほどに少年みたいだった。

「どうする?とりあえず俺と同じのいっとく?」

「おぅ、じゃあそれで」

そのままそこで待っていたスタッフに同じものをオーダーし「揃ったので料理もお願いします」と続けざまに言った。そして私たちの方に向き直ると、

「まず、紹介だけしておく」

「相良(サガラ)です」

紹介される間もなく、自分で名乗り出たその彼。

「名字だけとかそれって固くない?」

笑いながら言う巧さんに、

「いや、社会人として自己紹介って普通名字だろ?」

当たり前のように答える彼、相良さん。

「とりあえずいつもこんななんだよね。四月に地方から転勤してきたのに全然遊ばないから、今日は引っ張ってきてみた」

「固いか?普通だろ?てか、だいたいこっちの仕事と生活になれんので精いっぱい。遊ぶなんて余裕ないよ」

どちらかと言うと仕事も遊びもとパワフルなタイプに見える。それに地方から来たばかりって雰囲気は一切ない。言葉も普通だし、服装もあくまでスマート。
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