初恋のカケラ【3/13おまけ更新】

「愛羅ちゃん」

少し大きめの声で呼びかけるとピタリと止まり、そしてタタタッとこちらに駆け寄ってきた。

「クルミ先輩。どうしたんですか?」

心配そうに私を見上げて言う愛羅ちゃんに、ただ二人の時間を邪魔しないように帰るって言いたかっただけだとは言えず。

「あー、っと。相良さんと話してたんだけどね?どうやらご近所さんみたいで」

「えー?!、ご近所?路線一緒とかそんな感じですか?」

普通そう思うよね。だけど、

「いや、どうやら駅が一緒みたいで。近くでお酒の美味しい所クルミちゃんに紹介してもらおうと思ったんだけど、いいかな?」

横から今度は相良さんが助け舟。それを聞いて愛羅ちゃんの瞳がキラキラ輝いたのは言うまでもない。

「あっ、そうなんですね?じゃあもう愛羅たちは帰りますー」

嬉しそうにそう言って、先ほど愛羅ちゃんが立ち止まった位置で待っている巧さんにその事を報告すると、

「相良ー。ちゃんとクルミちゃん送ってけよー」

「はいはい、鈴木さんもお疲れでしたー」

駅まであとわずかだったけど、そこで私たちは愛羅ちゃんたちと別れた。

「実は私も、ちょっと飲み足りなかったりして」

肩をすくめて笑って言うと、

「だよな?じゃあ飲み直しで」

そう言って人懐っこそうな笑顔を浮かべた彼には下心なんてまるで見えなくて、同級生と一緒に飲むみたいな気分で自分たちの駅まで向かった。
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