初恋のカケラ【3/13おまけ更新】

「でもね、」

あの時、あのお店で思いだしてしまった。

先輩とも一緒に行って、たまたま座った席も一緒だった。同じように先輩もオーナーに話しかけ、そのままお店の雰囲気に溶け込んでた。
全然違うのに、何で思いだしてしまったのか。

「前に先輩と一緒に行った事想い出して、うっかりため息ついちゃって」

「うっかりすぎるわ、それ」

「うん、感じ悪かったかなぁって」

「何?反省してるの?」

反省?するというのならば、あの店をあの日選んだ事。
選んだときには全く先輩と一緒に行った事を想いださなかった事。

「あれから、もう四カ月も経ったんだね……」

「……そう、だね」

さっきまで被りつくようにしていたノリちゃんもすっかりトーンダウンして、眉を下げて困った顔をしてる。

「そろそろ、出張から戻ってきてるかな?」

「なんかそんな事言ってたっけ」

「うん、きっと先輩の事だから頑張りすぎてるんじゃないかなって」

「うーん、私にはわかんないけど」

ますます困惑顔のノリちゃんだけど、きちんと今言わなきゃいけない。

「あの頃はそう思っても、頑張ってくださいねとしか言えなかったから」

「そうなの?」

「うん、でも今なら言えるかな?」

「クルミ?」

戻りたいの?そんな顔をするノリちゃんに、

「あぁ、違うよ?やり直したいって意味じゃなくて。私、色々間違ってたなって気付いたって事。」

「……そう」

やり直しがきかない事も、次はそれを間違っちゃいけない事も。
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