初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「ごめんごめん、大丈夫だから」
「本当に?」
「うん、ダメだったら口に出して言えないって」
「そう、だね」
ただ寂しいだけ。こんなにも人の気持ちはすぐに変わってしまう事が。だけど今までこんな風に思った事もなくて、やっぱり大した恋愛してこなかったんだなって思う。
この恋は叶わなかったけど、得たものは大きかったんじゃないか。すぐにどうこうっていうつもりはないけど、次はきっと本音の自分でいけるような気がしている。
「ほらほら、飲もう?」
一緒に飲んで話して、心配してくれる人がいる。
「ねね、それでその人。どんな人?」
「どんなって。背が高くてガッチリしてて……、――
近くで見たら整った顔立ちをしてたんだってわかったけど、本人全くそれを気にしていないのか気取った感じはなくて……
「クルミ?」
「え?」
「何思いだしてニヤニヤしてるのよ。そんなにイケメンだったの?」
ニヤニヤなんて、でもイケメンって言うならば。
「そういえば、連れて行ってもらったレストランのシェフがすっごいイケメンだった!」
「何それっ、そこ連れてってよ」
「イケメンなんてちっとも好みじゃないくせに」
「だっておいしいワイン飲めそうじゃない?」
「やっぱりそっち?」
「ふふふ、でもま、今日の所はこれで我慢しておく」
「「乾杯」」
その日、私たちは終電間近まで飲み続けた。