初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「あの後うちの駅まで行って、近所にある行きつけのお店に行っただけだよ」
「だけってことはないと思うんです」
当然でしょ?と言わんばかりに鋭く切り込んでくる愛羅ちゃん。
「一緒に飲んだけど、零時前には帰ったよ?」
「そう言えば!近所ってどのぐらい近所だったんですか?」
「あぁその話ね。」
あの後、店を出て送っていくと言う彼に帰り道を聞くとさらに驚いた。
「うちもそっちなんだけど、って、住所は?」
さすがに町内とはいかないけれど、うちの前の通りを超えてすぐの場所だった。
「近所過ぎんだろ」
そう言って豪快に笑う彼に、つられて私も笑う。
結局マンションの前まで送ってもらって、そこから帰る彼を見送った。
その話をすると、愛羅ちゃんは大きな目をさらに見開いた。
「ええええええ、ご近所すぎますよ!ほんとに!」
「うん、私も驚いた」
「驚いたなんてもんじゃないですよ!運命ですよ!運命!」
目をキラキラさせた愛羅ちゃんを見ると、やっぱりそっちに話を繋げるのかと思う。
運命なんてそんな簡単に見つかる事じゃない。
「愛羅ちゃんは沢山運命感じられていいね」
「そうですよ!運命って思った方がテンションあがりますから。巧くんとの出会いも運命なんですっ」
愛羅ちゃんみたいに純粋に運命を信じてみたい。
これが運命かなんて今はわからない。だけどこんな偶然も悪くないと思い始めていた。