初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
家が近いと思うとついつい飲む手が進む。大して強くもないのに飲み口がいいとワインも日本酒も過ぎるのはきっと自分に甘いせい。

「このワイン、すごくおいし」

「だな。飲み口いいし、スルスルいくな」

そう言ってまた飲む。
相良さんは本当によく飲むけど見た目が全然変わらない。
ボトルで頼んだから、自分が何杯目なのかよくわかってない。

「今日相良さんに会えてよかったかも」

スルリとそんな言葉が出た。
頭の中で思い浮かんだままに口に出しちゃうって事は、けっこう酔ってる。
そんな自己分析をしている間、相良さんはグラスを持ったままピタリと飲むのをやめていた。

「や、あの変な意味じゃなくて、って何言ってんだろ私。」

「いや、役に立てて良かったよ」

慌てて弁解した私に、ニッコリ笑って言う相良さん。

たぶんあのまま一人で飲んでてもおいしく食事も出来なかっただろう。
同じ年だからかな?なんか相良さんて話しやすい。今日の事、言ってみようか。

「帰りに偶然、元彼を見かけちゃって。なんていうかちょっと複雑だったから……」

「だからか、」

「え?」

「クルミちゃん、難しい顔してた。」

あぁそうだったんだ。
もしかして、だから?ちょっと強引に誘ってくれたのは。
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