初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「へー、そんな偶然あるんだねー」
「ほんとに」
「だってあれでしょ?その子、花見の時にナンパした子」
ナンパって……、まぁそうだけど。
「おかげでいい店も紹介してもらって、こうして今日もうまい酒が飲める」
「はは、たしかに」
ノリちゃんがこんな風に楽しそうに飲んでるのを見るのは、あの時の集まり以来で。
木村がいればお酒をセーブしなくちゃいけないし、私とでは、
「クルミと一緒だとワイン、デキャンタが精々だから」
「は?この前二人で一本空けたけど?」
「えークルミいつも一杯でもうトロンだよ?」
「ちょ、ノリちゃっ」
「や、二、三杯は飲んでた」
「えー何それクルミっ、相良さんとは飲めて私とは飲めないっての?」
「や、だからっ違うってば」
ノリちゃんには言ってない。先輩を見かけてた事。だけどこの場でその話をするのはちょっと……
「何が違うのよ」
「まぁその話はあとでね?ゆっくり、ほら、家で、ね?」
私が何とかノリちゃんを宥めている間も相良さんは、特に口をはさむわけでもなくただ普通にお酒を飲んでた。
こういう時に下手に口出しして墓穴掘るっていうのが世の常で、私はよくそんな風にしてしまうのだけれど、彼はそれを心得てるらしい。
「で?次、ワインどれにする?」
なんとかノリちゃんを頷かせたタイミングで相良さんは私たちにそう声をかけた。