初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「ノリちゃん、とりあえず座ろうよ」
玄関に入るなり聞かれたから、靴は脱いで上がったものの二人とも立ったままで。
「あーうん、あればお酒」
あんなに飲んだのに、まだ飲むというのか。そんな目でノリちゃんを見るけど、そんな視線には動じない。
「先輩と飲もうと思って買ったワインならある」
「クルミ、あのね」
ノリちゃんの言いそうな事はわかる。そんなの取ってあるからいけないんだって。
「わかってる。だから飲んでここからなくしちゃえば……」
―――忘れられる。
「そうよ、そんなの成仏させちゃえばいいって」
成仏。そんな魂の鎮めるみたいなそんな事。
「そんな事言って、本当は飲みたいからでしょ?」
「はは、そうそう。だってさーさすがに初対面の相良さんに夜通し酒つき合わせるわけにはいかないでしょう?」
「……夜通しって。朝まで飲む気?」
「飲むって言うかさ。朝までガールズトークしておきたいわけよ」
結婚したら、そういう機会も格段に減るだろう。木村はいいって言ってもノリちゃんが気になっちゃって楽しめないだろうから。
「ノリちゃん、朝までならお酒買いに行かないとダメかも?」
「ふふ、そう思って。ちゃんと持ってきた」
珍しく大きなカバンを持っていたのは、着るものじゃなくてお酒だったとは。ノリちゃんらしいというか、なんというか。