初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「なんか予定でもあった?」
いや、ないけど。
だけど、ないって即答するのも。そんな複雑な思いで相良さんを見ればニカッと笑って「ほらこれ、うまそー」なんて画面をまた指して言ってる。
あぁ、そっか。体裁とかプライドとか見栄とかそんなの全部この人には……
「ないよ。ない。全然ない」
「はは、そんなに言わなくてもいいけどな?」
だって。イエスかノーか。その裏とかそんなものは関係なく、その言葉通りで捉えるから。
「うん、それおいしそ」
「だろ?」
ニカっと笑った顔をもっと崩して嬉しそうに笑う。
なんだ、そういうことか。相良さんの言う難しく考えんなって言った事。
この年になればとか、普通はとか、そんなことはいらない。
「明日も天気よさそうだから」
「よし、明日な。じゃ、乾杯」
彼は私のカプチーノのカップにカチンと自分のグラスを当てて飲みほした。
「ほんと、良く飲むね」
「家じゃめったに飲まないからな」
ちょっと呆れがちに言ったのに、意外にも真剣な顔で。
「そうなの?なんか相良さん家の冷蔵庫、ビール並んでそうなのに」
「まぁ数本は入ってるけど、一人で飲んでもあんまりうまいもんじゃない」
そういえば、ノリちゃんと一緒の時も楽しそうに飲んでたっけ。
「お酒より、その場が好きってこと?」
「酒は楽しく飲むもんだからな」
「うん、そうだね。私もそう思うよ」
相良さん見てると、ほんとにそう思う。こんなに楽しそうに、そしておいしそうに飲む人は他には知らない。