初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「へー、これはわかんねーな」
灯りさえついていない階段を上ると店の入り口からやっと明かりがもれてきた。
踊り場まで来ないと暗いままだから。
「間違っても入らないよね、ここ」
「だなぁ」
私も含め最初はみんな同じ反応で、最初に入って見ようと思った人はすごいと思う。
先を歩いていた私はドアをあけて相良さんを通す。
「さ、どうぞ」
「お、さんきゅ」
そのまま相良さんが店に入って、店内を見渡しながら
「中、結構広いんだな」
「うん、入口も扉1個だし、そんな風には見えな――」
すぐ後ろを歩いていた私は、その背中に当たってしまって言葉が途切れた。
相良さんは体が大きいから、何で止まったのか見えなくて後ろから「どうしたの?」と声をかける。
「あー……、っと」
一向に先に進まない相良さんに「席、一杯だった?」ともう一度声をかける。
クルリと振り返った顔は複雑な表情で、ただの満員とは違う何かがあると悟る。
「クルミちゃんの……がいる」
「ぇ、」
この前の偶然に続き、また会うとは。
でもここは、先輩の行きつけの場所だからいてもおかしくはない。