初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「え?なに?クルミはそう思ってくれないわけ?」
先輩、そういうのが誤解されるんだってわかってやってる?
しかもあの時のようないたずらっ子みたいなその表情は、今になってみれば色気さえ含んでいる。
好意がなくとも、うっかりその顔にクラっといきそうになるのに。
「だから、そういうのが。ダメなんですってば」
「はは、残念だな」
全く、先輩すっかりパワーアップしてるよ。
あ、もしかして……私が思いつめたみたいな顔をしてたのに気がついて、わざとそんな風に言ってくれた、とか?
昔からそう言う所あったけど、相変わらずそれを嫌みなく出来てしまう先輩。
随分と若く見える外見とこの性格だったら、
「先輩って、もてるでしょう?」
「全然。」
「嘘ばっかり、昔っからモテモテでしたよね?」
当時私の知ってる限りでも五人は告白されてた。
「そんな覚えはないよ、それに」
急に先輩は自分のグラスに目線を戻すと、黙り込んだ。
その様子を見てるだけしかできなくて、私もグラスを手にした。
「俺さ、ついこの前も振られたばっかだよ」
自嘲気味にそう言ってからグラスに口をつける。
そして残りの液体をすべて飲み干すと、あいたグラスをテーブルに置いた。