初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
相良さんの隣で電話の終わるのを待つ。

並んで歩くのも何度も経験してるはずなのに、少し上を向いて何度か相槌を打つその姿に見とれてしまって……
視線に気づいた相良さんが私を見てスマホを口元から離し「もうちょっと待ってて」と言ってから続きを話し始めた。

私が見ていた事で急かされたと思ってしまったのかもしれない。だから今度は道行く人を見ながら左耳から聞こえてくる会話に聞き耳を立てた。

「あぁ、うん、わかる」

「今日の方がいいよな?」

「じゃ、これから行くよ」

ピッ

「クルミちゃん。まだ時間大丈夫?」

「時間……」

言われて慌ててカバンの中のスマホを探す。

「今、九時ちょい過ぎ」

スマホを掴む前に頭上から聞こえてきた。

今日はここに来る約束だけだ。する事と言えば先輩との事を考えるぐらいだ。
だけど、大丈夫と言えば結論の出ないまま、もう一度先輩に会わなければいけないのか。

「リョクが戻ってくるって」

「え?」

「電車、まだ途中だったから戻ってくる」

「でも、」

先輩が心配だから帰ると言ったのに、私が届ければ済む話。

「先に帰ってもいいけど、出来たら一緒に待っててもらえるといいんだけど」

大和さんにも相良さんにも迷惑ばかりかけてる。
私と先輩の事に関係のない2人まで巻き込んで、

「あの、私が待ってるので相良さんは…―」
「帰んないよ。クルミちゃん一人置いてなんて帰れない」
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