初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
帰りの電車の中で相良さんは電話について一言も話をしなかった。もちろん先輩の事も。
行きたかったお店に行ったのだからその感想とか普通なら言うはずなのに、それさえもなかった。
先輩に話が繋がる事すべて避けている、そんな感じで。

そんな事を考えているうちにいつの間にか駅についてた。

「夜は結構涼しくなったなぁ」

「……うん。夏も終わっちゃったねぇ」

「だな」

もうすぐ10月になろうとしているのに、こんな会話はおかしいかもしれないけど。なんとなく夏が終わってしまう事に寂しさを感じてた。だからビールフェスタで夏を満喫なんて誘ってくれた時もちょっと嬉しかったんだ。

「まぁ、冬には冬の楽しみもあるしな」

冬の楽しみかぁ。
DVD三昧とか、みんなで鍋したり……

「考えたけど引きこもってやることしか思い浮かばなかった」

「はは、俺も鍋とおでんと……食べ物しか浮かばなかった」

「どっちもどっちだね」

そう言って二人で顔を見合せて笑った。
あぁ私、笑えるんだ。そう思った瞬間フッと相良さんの顔が柔らかく微笑んだ。

「まぁ冬と言わず、秋にもうまいもん食いに行こう」

「ふふ、また食べ物の事ばっかり」

「いいだろ?旬には旬のうまいもんがあるんだから」

なんでかな?相良さんといるとそんな普通の事も楽しみに変わるから不思議。
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