初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
スッと伸ばされた手がテーブルの上で軽く握っていた私の手を捉えた。
先輩のその行動に咄嗟に手を引こうとしたけど、一瞬遅かった。
付き合っていた頃は手を繋いで歩いた。だけど今はそんな間柄ではない。

それに、先輩のこの行動やその笑顔が今ではすごく……

ドクドクと心臓が早くなる。

しまいには両手で私の手を包むようにされて、どうしていいかわからずにそのまま下を向く。

止めて欲しいと言う気持ちがあるものの、それを言うこともできず。


目の前にいるのは先輩のはずなのに、
一度は付き合ったこともある人なのに

それなのに、……。

「クルミの事考えない日はなかったよ」

今更そんなこと…っ
驚いて顔をあげると、さっき注がれていた視線はなく変わりに見えたのは先輩の辛そうな顔。

「奇跡的にも偶然会えたのに、隣には知らない奴がいるし」

知らない奴って。相良さんの事よね?
あのイベントを先輩が知らないはずもなくて、日曜に行く可能性は十分にあったと今になれば思う。

「しかも大和の知り合いなんてな。世間は狭いって言うか」

そこで言葉が切れた。けれど手は掴まれたまま……
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