初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
大和さんは「やぁ」と私に声をかけた後、当たり前のように先輩の隣に座った。そして、すぐに届けられたビールを掴むとそれを掲げる。

「とりあえず喉乾いたから、乾杯」

「……んだよ、それ。全然乾杯のセリフじゃねーよ」

呆れたように言う相良さんは普段通りに戻ったよう。さっきまで先輩を睨んでた人とは思えないぐらい普通だ。
大和さんがせっかくそんな風に場を戻してくれたのだから私もそれに乗らないわけにはいかない。

「せっかくだし、私も飲んじゃお」

「ん、クルミちゃんも乾杯♪」

カチリとジョッキを合わせる。いつもなら飲まないビールの苦さも今だけは頭をクリアにする手助けをしてくれた。

相良さんに自分で言えるって言ったのに、また相良さんに助けられてしまった。それどころか大和さんまで巻き込んで。だから今、

「先輩。」

コクリと喉を鳴らす音が聞こえた。それは私だったのか先輩だったのか。

終わりも始まりも半年前でなく、今ここで。
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