初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「もう、無理なんだよな?」
先輩の問いかけに小さく頷く。
「あの頃のクルミじゃなくて今のクルミと向きあいたいと言っても?」
縋るような眼、けれどそれは遅すぎた。
「……半年前より、さらに進化してますから」
「はは、そうか」
笑ってはいるけれど、やっぱりそれはいつもと違う。それでもこのまま言葉を続けなければいけない。
「だからもう初恋ごっこは終わりにしませんか?」
「そうだね……」
力なく笑う先輩に優しい言葉をかけるわけにはいかない。
あの頃は本当に好きだった。だけど私も先輩も表面上の幸せばかりを追い求めて、根本の所に触れてなかった事に当時は気づいていなかった。
別れ話をされた時に気付いたとはいえ、話しあえなかったんだから私も先輩と同じだ。だけど今度は先輩も理解してくれたんだと思う。
ホッとしたと同時に、隣の相良さんの様子が気になりだした。
チラリと見たけど、何か言う感じでもなくて。ただ静かにお酒を飲んでる。
「外やん、店変えて飲むよ」
「や、今日はもう…―」
「いいから、ここはジュンキが払っとけよ?」
「お?おぅ」
「じゃ、クルミちゃんまたね」
「はい。あの、ありがとうございました。」
大和さんはそれには微笑むだけで、先輩を立たせて連れだした。
「あの人の気持ちもわかんなくないだけにな、」
さっきも言ってたけど、その言葉が意外で。
「相良さんって閉じ込めちゃいたいタイプなんだ?」
何の気なしに言った言葉だった。だけどそれには相良さんがハッとして、
「そんなのは独りよがり、だよな」
そう言ってやっぱりさっきみたいに遠くを見た。
そこには誰か想う相良さんの姿が見えて、心の奥がツキリと痛んだ。